剣道の技のレパートリーが少ない、攻めのパターンが少ない、得意技が少ない、なかなかうまく技を決められない、といった悩みを抱えている剣士は多いもの。
剣道の技には「仕掛け技」と「応じ技」の二大カテゴリーがあります。状況に応じてそれらの技のなかから最適なものを選択して試合を運んでいきます。
しかし、戦局だけではなく、練習・修行の各段階や試合相手のタイプなどによってどんな技が適切かは変わってきます。
そこで、今回は、そんないくつかのステージやシチュエーションを想定し、それぞれにどのような技を選べばよいかという1つの目安を示したいと思います。
覚えておきたい技や使いやすい技のパターンとして活用してみてください。
初心のうちに覚えたい技
初心者のうちは、試合でもどのような技を使えばいいのか、とまどうことが多くあると思います。
そこで、基本的ながらもその他の技のベースとなる重要な技術をいくつか挙げてみましょう。
小手・面
連続技の基本となる「小手・面」は、もっともオーソドックスな二段打ちです。
初太刀から二の太刀へと連携するタイミングやその際の踏み込み足の使い方、そして二撃目・三撃目への変化のバリエーション等々、実に学ぶところの多い技です。
この小手・面を徹底的に練習しておくことで、その他の技の修得もスムーズになるといわれています。
初心のうちにこそしっかりと身につけておきたい技のひとつです。
詳しくはこちらの記事をどうぞ。
剣道の連続技のパターンは実にさまざまな種類がありますが、そのなかでもよく見られる、または有効なパターンに関してお伝えします。剣道では、こちらから能動的に仕掛ける技を「仕掛け技」と分類しています。そんな仕掛け技の中でも、素早い竹刀さばきで剣道らしい特徴を感じさせるのが「二・三段の技」です。複数の打突を組み合わせた連続攻撃
出ばな小手
応じ技のなかで最初に覚えたいのが出ばな小手(※)。出ばな小手は技の起こりをカウンターをとるために有効になる技です。
相手の攻撃に合わせて行う応じ技に必要な、間合いやタイミングの取り方などのエッセンスを体感することができますので、最初に覚えるとよいでしょう。
ただし、得意技になっても出ばな小手だけに頼ることのないよう、他の技も幅広く練習していきましょう。
出ばな小手に関してはこちらの記事もどうぞ。
剣道の出ばな技(出ばな面、出ばな小手)のコツと一本を決めた動画
剣道で相手を打ち込むチャンスというのはさまざまな状況があります。なかでも、技が発動するその瞬間、いわゆる「起こり」「出頭(でがしら)」「出ばな(出鼻)」などと呼ばれるタイミングが重要なものとして挙げられています。このような機会を捉えて打つ技を「出ばな技」と呼んでいるわけですが、なかなか慣れないうちは相手の次の動きがわか
※出ばな技は仕掛け技として扱われることが多いですが、ここでは、技の起こりを捉えるということは、相手の動きに応じているという考えのもと応じ技として扱っています。
小手抜き面
応じ技でもうひとつ、小手抜き面を修得することをおすすめします。
「抜き」系統の技のなかでも分かりやすく、それでいてタイミングの取り方や「胆力」といった気持ちの持ち方まで実感できる技であるため、ぜひ練習しておきたいものです。
小手抜き面はこちらの記事をどうぞ。
【動画あり】剣道の抜き技(面抜き面、小手抜面、面抜き胴)のコツと決め方
剣道ではこちらから能動的に攻撃をしかけるものを「仕掛け技」、そして相手の攻撃をかわしたり返したりしてカウンターをとる技を「応じ技」と分類しています。ここでは、応じ技のひとつである抜き技に関してお伝えします。抜き技は面抜き小手が代表的ですが、他にもバリエーションはありますし、抜くタイミングが分からない、コツやポイントを知
剣道の試合を有利に進めるために使いたい技はこの3つ
実際の試合では多くの技が決まり手として満遍なく使われるというわけではなく、どうしても頻出するものの傾向が出てきます。
そんななかでも、現状を打破して優位に試合を運べる技を以下に選びました。
単発打ちの隙をついて小手すり上げ面
スピードに自信のある選手のなかには単発での小手打ちで勝負をかけてくる人もいます。
そんな相手に当たったときに使いたいのが小手すり上げ面です。
自身の竹刀の裏鎬ですり上げてそのまま面を打つ方法が効果的で、単発の隙を許さずに捉えます。
小手すり上げ面についてはこちらが詳しいです。
剣道の応じ技、すり上げ技を決めるには? 最も簡単にできるすり上げ技はこれ
剣道の応じ技のなかには、「かわす」「返す」「打ち落とす」といった動作のほかに「相手の攻撃の軌道をそらす」という系統の技法があります。そんな技のなかでも鎬(しのぎ)を使って相手の打ち込みをそらすのが「すり上げ技」です。竹刀を用いた技術のなかでももっとも「剣術らしい」といわれる、そんなすり上げ技について解説します。すり上げ
膠着した状態を打開する、片手突き
実力が伯仲して試合が膠着した場合、思い切った片手突きが有効に働くことがあります。
ただし、意外なほど動作を読まれやすい面があるため、十分な攻めを行う必要があります。
片手突きをもっと詳しく知るにはこちらの記事をどうぞ。
剣道の片手技のコツを片手突き、片手面で一本とった動画つきで解説
上段や片手上段、または二刀流、二刀の構えなどは最初から片手打ちをすることが前提ですが、諸手の中段構えからでも片手の技を使うことができるのです。ですが、中段の構えであっても片手技を出せるようにしておくと、それだけ攻めのバリエーションが増えますから身につけておきたいものです。ここでは、そんな片手技について解説します。片手技
上位の相手に捨て身で挑む、かつぎ面
明らかに実力が上の相手とも戦わなければならないこともあります。
そんなときは捨て身の心構えでかつぎ面を使ってみましょう。
本気で攻めて思い切りよくかつぐことが肝要で、迷いやためらいはかならず見透かされます。
無心で打ち込むことで活路が開けるかもしれません。
かつぎ面を含む「かつぎ技」についてはこちらをご覧ください。
剣道ではこちらから能動的に攻撃を繰り出す「仕掛け技」といいますが、その際のポイントの1つは相手の竹刀をいかに無力化するかです。相手の竹刀が中心線にあって自分の侵入をさまたげているような場合、相手の竹刀をどのように無力化したらいいでしょうか?その方法として払い技、巻き技、連続技(二段三段の技)で防御のロスをついたりと色々
修得難易度の高い高等技術
世界最高峰の選手であっても皆が皆使えるわけではないという、高等技術が存在しています。
修得の是非はともかくとして、練習するだけでも意義のあるものを以下に挙げます。
面抜き面
面抜き面は相手の面を竹刀を振りかぶりながら後退して抜き、即座に面を打つという大技です。
日本剣道形一本目に見られることから、難易度の割にはよく知られた技でもあります。
面抜き面に関してはこちらもどうぞ。
【動画あり】剣道の抜き技(面抜き面、小手抜面、面抜き胴)のコツと決め方
剣道ではこちらから能動的に攻撃をしかけるものを「仕掛け技」、そして相手の攻撃をかわしたり返したりしてカウンターをとる技を「応じ技」と分類しています。ここでは、応じ技のひとつである抜き技に関してお伝えします。抜き技は面抜き小手が代表的ですが、他にもバリエーションはありますし、抜くタイミングが分からない、コツやポイントを知
日本剣道形の一本目をより詳しく見るにはこちら。
日本剣道形一本目の動画と解説、形の意味と実践でどう役立つか?
日本剣道形は段位審査で必ず演武しなくてはならないものであり、剣道の真髄が凝縮されたつまった宝庫とも言えますから、とても重要なものです。しかし、防具・竹刀を用いた現代剣道の感覚では難解な動作も含まれ、真に形を理解するためにはその意味や日本刀の操法までを考える必要があります。ここでは日本剣道形「一本目」の動作を解説しつつ、
面返し小手
面返し小手は相手の面打ちを受け返して、そのまま右小手を捉えるという精妙な技です。
スピードと正確な間合いの判断、そして鋭くもやわらかい手の内が必要な技です。
面返し小手についてもっと詳しく知りたい場合はこちらをどうぞ。
剣道の応じ技の1つ返し技。うまく決められればいいのですが、間合いが詰まってしまって打てない、なかなか有効打突にならず一本取れない。あるいは、返したはずが相手に一本とられていた……。ということもよくあること。そこで、ここでは剣道の応じ技の1つである返し技に関して、やり方、一本を取るコツを動画とともにお伝えします。返し技と
面打ち落とし面
面打ち落とし面は相手の面打ちを打ち落とすと同時にそのまま面を捉えるという技で、「面切り落とし面」とも呼ばれます。
「一刀流」の極意である「切り落とし」に通じる技であり、後の先としては究極形を示す技のひとつともされています。
面打ち落とし面に関してはこちらにも詳しいです。
剣道、打ち落とし技を決めるには? 比較的決めやすい打ち落とし技とその解説
剣道の応じ技のなかには、相手の太刀筋そのものを迎撃したうえで反撃するというタイプの技が存在します。攻撃そのものを無力化されるため、相手にとっては厄介なカウンターとなるこれらの技を「打ち落とし技」として分類しています。打ち落とし技は竹刀のどの部位で打ち落とすのか、足さばきはどうしたらいい? タイミングは? など難しさもあ
まとめ
以上に挙げたものはあくまでも一例にすぎません。
もっと多くの状況や段階において望まれる技の数々が出てきますが、各人の工夫研究によるところも大きいため、最低限の例を示すにとどめています。
重要なのは、自分自身にとっての「得意技」を少しずつ増やしていくことと、多くの技をまんべんなく稽古しておくということです。
あらゆる状況下において、そのときの最適解を自然に導けるようになるまで稽古することが、高い境地へとつながるとされています。
もちろん、結果として試合や昇段にもつなだっていくのはいうまでもないでしょう。
コメント