上段や片手上段、または二刀流、二刀の構えなどは最初から片手打ちをすることが前提ですが、諸手の中段構えからでも片手の技を使うことができるのです。
ですが、中段の構えであっても片手技を出せるようにしておくと、それだけ攻めのバリエーションが増えますから身につけておきたいものです。
ここでは、そんな片手技について解説します。
片手技とは
文字通り片手で放つ技のことであり、諸手の中段構えからは片手を離し、もう一方の手で打突することになります。
右手のみ、左手のみの技がそれぞれありますが、現在ではほとんどの場合、左片手で行う技が使われています。
そんな片手技について、三種類を以下に挙げましょう。
- 片手突き
- 片手面の1つ、片手反面
- 片手面の1つ、鳥刺し面(右片手面)
片手突き
その名のとおり、片手で相手の突き垂れを捉える技です。
片手突きというと、ほぼ左片手で突いて右足を踏み込む技のことであり、このページでもこの方法について解説します。
リーチが長く伸びる技であるため、飛び道具的な使い方ができます。ただ、外れたときやかわされたときに大きな隙ができますので、多用はできません。
片手突きを出すには十分に腰を入れて右足を踏み込み、左片手で真っ直ぐに突きます。
このとき竹刀の柄から離した右手は素早く腰に引き付けて、突きの威力を増加させます。
これはボクシングでいう「ストレート」や、空手でいう「逆突き」に通じる技であり、片手ではありますが腰のひねりを十分に活用できる、強力な突き技です。
突いたあとは素早く引いて元の構えに戻ることが重要であり、少しでも反撃されるリスクを軽減する意識も必要です。
中段の選手にとっては、対上段への戦術として有効なため日常的に稽古しておきたい突き技でもあります。
上段への相手に片手突きを決めた試合の動画
上段の構えにたいして突きが有効になるのはよく言われること。この動画では上段の構えに対して片手突きを見事に決めて一本をとったシーンが収められています。
片手突きで一本
片手面の1つ、片手半面
聞きなれない技名かもしれませんが、つまりは左片手で相手の右横面を打つ技です。
「半面」とは横面のことであり、現在では横面はほとんど打たれなくなった技のひとつとされています。
片手半面は竹刀を右に開くような要領で旋廻させ、右手を離して左足で踏み込み、「左半身」の体勢になりながら左片手で相手の右横面を打ちます。
通常ならまずとることのない体勢であり、中段の構えの選手では左足で踏み込む動作も慣れないものがあるでしょう。
ですが、古来より膠着した戦局を打開する隠し玉のような技として伝わっています。
斜めの軌道で面を打つため、特に次の2つのことが重要です。
- 刃筋をしっかり通すこと
- 片手突き同様に離した右手を素早く強く腰に引き付けて、反作用を利用して打ちに威力を加えること
このページでは片手面を仕掛け技で紹介していますが、相手の小手打ちに対して「小手抜き片手半面」という応じ技として使うことも可能です。
片手反面で一本を取った動画
こちらは上段の剣士が鍔迫り合いから片手技(片手面)を放ち、一本を取った試合の動画です。
鍔迫り合いから片手面で一本
片手面の1つ、鳥刺し面(右片手面)
これも非常に珍しい技ですが、片手技の参考として紹介したいと思います。
ほとんどが左手で行う片手技にあって、これは右片手で面を打つものです。
しっかりと振りかぶり、右手を柄頭近くに寄せた状態から右足で踏み込んで腰を入れ相手の面を打ちます。
古くは諸手から右手だけを繰り延べて、軽く面を捉えるように使われた時期もあったといいます。
意表をつくという意味ではまさしく最適な技のひとつかもしれませんが、先例があまりなく審判もとまどう可能性があります。
ですので、膠着した試合の終盤や、実力が伯仲して延長戦が続いたときなどに思い切って出してみると一本に認定される確率が上がるかもしれません。
まとめ
片手技はそのリーチと相手の意表をついた攻め口で、飛び道具や隠し玉に例えられるといえるでしょう。
多用してその動きを見切られてしまってはこちらにとって多大なリスクとなるため、とっておきの技として、あるいは流れを変えるための機会にするといった技として磨いておくとよいでしょう。
使うときはチャンスを狙いすまし、一撃必中の精度をもって思い切りのよい動作が必要です。
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