剣道の仕掛け技の1つである「払い技」。どうすれば、うまく試合で決めることができるようになるのでしょうか?
剣道では、こちらから能動的に攻撃していくタイプの技を「仕掛け技」と分類していますが、だからといって、やみくもに打っていっただけではまず有効打突にはなりません。
特にお互いに中段、つまりは相中段での攻防では、中心に位置する相手の剣先がこちらの侵入を邪魔しますから、うまく攻略しないと攻めきれないでしょう。
攻め方はいくつかありますが、有効となる方法の1つが相手の竹刀を無力化し、中心をとって攻め込むための技です。
その具体的な技として、ここでは「払い技」についてお伝えします。
払い技を決めるコツとポイント
払い技とは読んで字のごとく、相手の竹刀を払って打つ技です。相手の中心を外して、隙のできた部位を打ち込みます。
シンプルながらも正確な竹刀さばきが必要で、払った後でスムーズに打ち込むための体さばきも要求される、奥の深い技です。
表から払うケースと裏から払うケース、またどこの打突部位を狙うかという違いはありますが、いずれの場合も、払い技をうまく決めるためには次の4つを押さえておくと効果的です。
- 払う機会を捉える
- 打つ途中で払って打つ
- 払うときの足さばき
- 円を描くように払う
それぞれ見ていきしまう。
払う機会を捉える
払い技というのは、自分からいきなり払いにいってもなかなか成功することはありません。払う機会があります。
では、その払う機会とはどんなときかというと、相手の出てくるところです。
例えば、前に出て下がって、という攻防を繰り返していたときに、相手が前に来たところを狙って払います。
打つ途中で払って打つ
また、初めのうちは、「払う → 打つ」という形で動作を分けて練習するのもいいのですが、それでは払い技で一本は取れませんし、そもそもスムーズに打てないでしょう。
払い面をやろうとするなら面を打つ動作の中に払いが入っているようなイメージで打ちます。自分が面(小手・胴・突き)を打つ途中で払って打つということですね。
払い技のときの足さばき
払い技は払って打つ、という2つの動作というよりも、打つ途中で払って打つわけですから、そうなると当然、足も動かすことにあります。
ですから、足さばきも重要な要素の1つです。ポイントは、右足を出しながら打つ体勢になってその体勢の中で払うという点です。
円を描くように払う
相手の竹刀を中心からずらして打つのが払い技。払い技の目的は払うことではなく打突です。
ですから、ただ払えばいいというわけではなく、払った後にスムーズに打突できるようにすることが重要です。
そのためにも竹刀を横に払ってはいけません。横に払うと次につなげにくくなりますから半月を描くようにして、あるいは半円を描くようにして相手の竹刀を払って、次の打突につなげます。
払い技の種類とそれぞれの打ち方
次に、払い技のバリエーションとして以下のように有効打突の部位に即した形で、それぞれについてやり方をお伝えしていきましょう。
- 払い面
- 払い小手
- 払い胴
- 払い突き
払い面
相手の竹刀を表、あるいは裏から払い、中心線の守りを無力化して面に打ち込む技が払い面です。
払う動作は「払い上げる」形となり、これは表からでも裏からでも同様となります。
「木刀による剣道基本技稽古法」の三本目に「払い技」として表からの払い面が採用されています。
技が決まれば大きく相手の構えを崩すことになるため、基礎的ながらも相手の竹刀を無力化する手順が凝縮された、すぐれた技法でもあります。
注意すべき点としては、払い上げる際には自身の竹刀を「弧を描くように」して、竹刀が頂点に達したときは相手の正中線上に位置していることが必要となります。
そのまま振り下ろせば面を打てる、というロスのない状態をつくりだすことが肝要であり、そうでなければ相手に防御か反撃の猶予を与えてしまうことになります。
表・裏ともに使える技ですが、相中段の場合は表からだと払い上げやすい反面、相手の竹刀の復元力も強いため防御されやすいという特性があります。
一方、裏から払い上げた場合は相手にとって右手首の関節が曲がる方向に向かって力が加わるため、表払いよりも隙が大きくなる傾向があります。
ただし、こちらからも払う動作が大きくなりがちで、もし払いをかわされたときには自身に隙ができることに注意すべきでしょう。
払い面の動画
丸亀武道館一心会さんによる「木刀による剣道基本技稽古法」の三本目の解説動画がこちらにありますので、参考にするといいと思います。
払い面の動き
※動画は払いの部分から途中再生されますが、繰り返し見る場合には初めから再生されることがあります。43秒から1分48秒付近までが払いの解説映像になります)
払い小手
払い小手は通常、裏から払って相手の竹刀が流れることで隙のできた小手を打ち込む、という手順がセオリーとなります。
コンパクトな技ですが、しっかりと手の内をきかせて打ち切ることで十分に一本になる技だといえます。
しかし、面を攻める気勢で強く中心線をとり、表から払い上げて相手が防御反応を起こした瞬間に浮いた手元を狙う、あるいは表払いを受けた相手が思わず竹刀の位置を復元しようと急速に中心に戻した瞬間などを狙って小手を打つという方法もあります。
竹刀が下がっている相手に対して裏から払って、竹刀を上げたところをすかさず小手を打つという方法もあります。
いずれにせよ、単発ではなく中心の取り合いという駆け引きに織り交ぜて払い技を使うことがポイントとなります。
払い胴
表あるいは裏から払い上げた瞬間に、相手が面をかばう素振りを見せた場合に有効なのが払い胴です。
最初から払って胴打ち、というシチュエーションはなかなかないでしょうが、相手の反応によって打つべき部位を柔軟に捉えることも重要な戦術となります。
ですから、打つ機会が少なかったとしても十分に練習をしておくことが大切になります。そうしたところで差がつくものです。
払い突き
相手の竹刀を払って、中心線の防御ががら空になったときにその突き垂れを捉える技です。
面や小手をかばう相手にももちろん有効ですが、むしろ間合いを切って「あまして」次の攻撃をかわそうとする相手に効果のある払い技です。
もちろん、こちらの体勢が崩れてしまわないようにしっかり腰から動いて突くことが重要なのは他の技と同様です。
まとめ
払い技は物理的に相手の竹刀の中心線を外させる技術であり、基本的な「崩し」の方法であるといえます。
しかし、その間はこちらも大きく防御が崩れることになりかねないため、しっかりと攻め勝った状態で払うことによって、技の精度が変わってきます。
払い上げたら間を置くことなく、一挙動で攻撃ができるように竹刀を中心線上に位置させるというポジショニングも重要な課題のひとつです。
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