剣道のかつぎ面で一本取った動画から分かるかつぎ技のやり方

剣道のかつぎ面で一本取った動画から分かるかつぎ技のやり方

剣道ではこちらから能動的に攻撃を繰り出す「仕掛け技」といいますが、その際のポイントの1つは相手の竹刀をいかに無力化するかです。

相手の竹刀が中心線にあって自分の侵入をさまたげているような場合、相手の竹刀をどのように無力化したらいいでしょうか?

その方法として払い技巻き技連続技(二段三段の技)で防御のロスをついたりと色々な方法がありますが、中には相手の竹刀に触れずにその中心線を崩すという方法もあります。

それが「かつぎ技」です。

数ある仕掛け技の中で異色ともいえる特性を持った、そんなかつぎ技について、実際に試合で決まった動画をご紹介しつつ見ていきましょう。

かつぎ技とは

「かつぎ技」とは、読んで字のごとく自身の竹刀を大きく肩にかつぐように構えて打ち込む技の総称です。

一般的には左肩にかつぐことが多く、ちょうど「逆八相(ぎゃくはっそう)の構え」を深くとったような姿となります。

これは攻めの一種であると同時に、相手に「打たれるかもしれない」という防御反応を起こさせ、大きな軌道で振りかぶることで攻防の間を外すという効果があります。

かつぎ技は、あまり試合では見られませんが、狙い所は次の3つといえます。

  1. 相手も自分も一通り技が尽きたとき
  2. 試合が固まってしまって崩したいとき
  3. 相手の手元を上げさせたいとき

以下に、そんなかつぎ技のバリエーションを挙げてみましょう。

かつぎ面のやり方とポイント(動画あり)

竹刀による攻めと体による攻め、そして気による攻めを十分にきかせた状態で思い切りよく一歩踏み込み、大きく竹刀を左肩にかつぎます。

この瞬間の相手の反応によって空いた部位を打ちます。そのとき、面を捉える場合に「かつぎ面」と呼びます。

かつぎ技は相手の間を外してタイミングの取り方をかく乱する効果があり、かつぎ動作への対処に相手が一瞬躊躇するタイムロスを有効に利用するのが成否のポイントとなります。

自身は面も小手もさらけ出す状態となり、リスクの高い技ではありますが、捨て身の気構えでしっかりと攻め勝つことが重要となります。

大きくかついだことで「面を打たれる」と警戒した相手がその一瞬後に、「そう見せかけて胴を狙ってくるのでは」と迷いをみせたときにこの技の真価が発揮されます。

通常は目まぐるしいスピードで攻防が展開する剣道の試合運びですので、大きく振りかぶったそのわずかな時間差が相手に混乱を与えるのです。

とはいえ、もし相手がかつぎ技に頓着せずに打ち込んできた場合でも対処できるような体勢と心構えを整えておくことはいうまでもありません。

かつぎ面で一本となった試合の動画

2012年、静岡県で開催された「富士のさと剣道大会」の決勝を撮影したこちらの動画にて、かつぎ面が見られます。


かつぎ面にて一本が決まった試合を収めた動画

※動画は途中から再生されますが、繰り返し再生すると初めから再生されることがあります。かつぎ面の場面だけを見たい場合には4:55付近から見てください。4:22付近にて赤が一本取った後に試合が再開されていますので、試合の流れから確認したい場合には4:22から見てみるといいでしょう。

動画を見ると攻めと同時に左に竹刀をかついで面にいっているのが分かると思います。

攻めたときにスッと左肩に竹刀をかつぎ、相手を翻弄してから面を打っています。

かつぎ小手のやり方とポイント

かつぎ面と同様の手順で、小手が空いた場合に小手打ちを行うのが「かつぎ小手」です。

注意しなくてはいけないのは、大きく深く肩に竹刀をかつぐため、打ち込みの軌道も大きく強くなりがちだという点です。

小手は動きも多く、的も小さいため的確に小手を狙うためには手の内をやわらかくして鋭く打つ必要があります。

かついだ状態からの小手打ちは必要以上の勢いがついて力みがちとなるため、冴えのある打ちを正確に繰り出すという緩急のつけかたが重要となります。

かつぎ胴のやり方とポイント

かつぎ面・かつぎ小手と同様に、胴に隙ができた場合に胴打ちを行うのが「かつぎ胴」です。

実際に使われるかつぎ技の決まり手としてはこのかつぎ胴が多いともされ、竹刀をかついで、相手が面をかばって竹刀を頭上にあげた瞬間が大きなチャンスとなります。

かついだ状態から胴を打つことには大きく次の2つののメリットが考えられます。

  1. 一本と認められやすい胴打ちができる
  2. 胴打ちの変化が比較的簡単

一本と認められやすい胴打ちができる

ひとつには、軌道が大きくなるため強力な打ち込みが可能となり、一本と認められやすい胴打ちができることです。

刃筋が通ってしっかりと打ち込んだ胴は、例外なく高く乾いたようないい音がします。

審判が旗を揚げるのには、ひとつはこの音の良し悪しも判断材料のひとつになっているといわれており、正しい打ちの証明になることが考えられます。

胴打ちの変化が比較的簡単

もうひとつは、左肩であってもあとは竹刀を振り下ろすだけで打てる状態のため、即座に「逆胴」へと変化することも簡単であるという点です。

左右の胴を射程に捉えたかつぎ技は、意外なほど自由度の高い技法であることが分かります。

まとめ

かつぎ技は、現代剣道では積極的に使う人はあまりいなくなったものといわれています。

しかしながら、膠着した試合運びや実力が伯仲している場合などには現状を打開する大きな武器ともなるため、咄嗟の場合に使えるように練習しておきたいものです。

ただし、多用すると動作を見破られることから滅多には繰り出せないこと、また、単なるフェイントにならないよう戒めること等々、用法の難しい技であることにも注意しておきましょう。

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