日本剣道形とは、剣道以前の真剣を用いて戦っていた時代に編み出された、「剣術」の技法と精神を受け継ぐものでもあります。
それらは剣道の本来の姿であるとも考えられますが、防具を着用して竹刀で打ち合う現代剣道の感覚からは、とても難しいと思われることもよくあります。
しかし、先人達が命を懸けて作り上げてきた、競技としてではない技と心の真髄が剣道形には凝縮されているのです。
ですからその意味を知って稽古に結びつけることで、昇段審査はもちろん、実戦にも活きてきます。
ここでは日本剣道形「四本目」の動作を解説しつつ、その意味を考えながらどのように竹刀稽古に応用すべきかについてお知らせします。
日本剣道形四本目の概要
四本目は打太刀が「八相の構え」、仕太刀が「脇構え」から始まります。
双方三歩進んだところで、両者ともそれぞれの構えから上段の構えへと移行しつつ、互いに頭上で切り結びます。
頭上から両者せめぎあいながら中段へと下ろし、機を見て打太刀は仕太刀の右肺めがけて突きを放ちます。
仕太刀は左足から左斜め前に体をさばき、刀を剣先を下にして右体側に立てるようにして打太刀の突きを流し、大きく巻き返して面を打ちます。
残心を示しながら元の位置へと戻り、形を終えます。
実際の様子はこちらの動画が参考になります。注意点や間違いやすい点の解説もあり、複数の角度からも見られます。後半に日本剣道連盟の公式動画もご紹介します。
四本目、打太刀の動き
打太刀は右肩に担ぐような要領で刀を立てた「八相の構え」をとります。
三歩進んで上段の構えを通りながら仕太刀と頭上で切り結びます。
そのまま緊張感を持ってせめぎあいながら中段へと下ろしていき、機を見て「ヤー」の掛け声とともに仕太刀の右肺を狙って突きます。
この時、打太刀の刀は刃を自分の右方向に寝かせた「平突き」の要領で突くことがポイントです。
渾身の一撃を仕太刀に流されて面を打たれるため、打太刀の姿勢は前傾し、剣先がやや下がった体勢をしっかりととることが肝要です。
前傾していた姿勢を元にもどしつつ剣先を上げながら、仕太刀とともに元の位置へと戻っていき、形を終えます。
四本目、仕太刀の動き
仕太刀は剣先を右斜め後ろへと流し、刀身全体を体で隠すような「脇構え」をとります。
この構えは剣先の位置を自身の膝の高さほどに維持し、刃の角度は外側に向かっておよそ45度を目安にします。柄頭をしっかりと相手に向け、刀身を見せないようにしつつも十分な攻めの気勢をもって構えることが肝要です。
三歩進んで上段の構えを通り、打太刀と頭上で切り結びます。この時には打太刀もそうですが、途中で動きを止めないように切っていきます。
両者が激しく中心を争いながら中段まで下ろしてきたところで、打太刀が右肺に向けて刀身を寝かせた突きを繰り出してきます。
仕太刀は左足から左斜め前に体さばきしつつ、刀身を下に向けて体の右側に立てるようにして、打太刀の突きを受け流します。
その勢いを利用して刀を大きく巻き返し、打太刀の面を打ちます。
残心を示しながら打太刀の刀の上を押さえる心持ちで中段に合わせていき、元の位置に戻って形を終えます。
四本目に込められた意味とは
現代剣道の試合ではまず目にすることのない攻防ですが、四本目は日本剣道形のなかでも最も「古流剣術」の風合いを残した技ともいえます。
剣道形で使われる五種類の構えを総称して「五行の構え」と呼んでいますが、その五行でいえば八相は「木(もく)」、脇構えは「金(ごん)」にそれぞれ相当します。
そして、相性が良くない五行の組み合わせである「相克(そうこく)」の理論に当てはめると、「木」の八相は「金」の脇構えに負けてしまう「金剋木(ごんこくもく)」という形が成立します。
これは金属製の刃物が樹木を傷付ける、という象徴的なものですが、剣道形にはこのような「五行理論」が組み込まれているのです。
竹刀での応用について
四本目を通して体得すべきことは、真剣勝負おける捨て身の緊張感です。
「鎬(しのぎ)を削る」ということわざがありますが、まさに四本目の攻防がそうであり、生死をかけて闘った時代の緊迫感を追体験することに大きな意味があるとされています。
できれば木刀ではなく、形用の模擬刀や刃引きした真剣などで稽古すると四本目の緊張感をより深く感じることができるでしょう。それは竹刀を用いた勝負にも、さらなる集中力を与えてくれるものとなります。
お手本となる日本剣道形四本目の動画
こちらは日本剣道連盟の公式動画になります。全体を通しての動画ですが、四本目の開始から再生されるようにしています。
まとめ
剣道の源流である「剣術」の風情を色濃く残した四本目は、竹刀での稽古だけではなかなか分かりづらい心の在り方を教えてくれます。
他の形でもそうですが、ただ単に手順や姿だけをなぞるだけでは本来の形稽古の目的を果たせません。
流れが決まっているものであっても、実際には相手がどのように攻撃してくるか分からないという心積もりで、迫真の稽古を行うことが大切です。
四本目はそんな真剣勝負の胆力を養うためにも、非常に優れた効能をもった形ですので、竹刀での稽古にもさらなる緊迫感をもって取り組めるようになるでしょう。
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