剣道の初段は中学生からとれます。ですから、まだ練度がさほど伴わない時期でも昇段審査を受けることはできますから、学科試験でどう答えたらいいか分からない……ということがあっても不思議ではないでしょう。特に10代半ばの若者なら無理もないように思います。
そこで、ここでは剣道の間合いとは? ということで模範解答となり得ることを解説していきます。
丸暗記でも無意味ではないのでまずは知ること
ただし、昇段審査も模範解答を丸暗記してもさほど意味はないというのは言うまでもありませんね。初段、二段と段位は取れるかもしれませんが、それだけでは上達は難しいのは当然です。おそらく耳にタコができるくらい聞いているとは思いますが……。
ただ、だからといって、丸暗記がまったく何の役にも立たないわけではありません。というのも、何も知らずにいるよりも、言葉を暗記しているだけでも頭の片隅には残り、後になって気づきを得ることがあるからです。
10代の若い頃にはあまりないかもしれませんが、最初はただ知っているだけだったり、表面的な理解であっても経験を通して後になって「あれは、そういうことだったのか!」という体験をすることもあります。形から入って心に至るという言葉もあります。まずは言葉だけでも知ることから始めて(=形から入る)、後から活きるようにしたらいいでしょう。
また、昇段審査に落ちてイヤな気持ちになるより、合格して嬉しいと思えたほうが稽古・練習に積極的になれるでしょう。
なので、今後の剣道の上達を目指して自分の頭で考えるためにまずは知識として知る、ということを前提として進めたいと思います。
剣道の昇段審査で問われる間合いとは?
さて、前置きが長くなりましたが、昇段審査でよく問われる「剣道の間合いとは?」「剣道のの間合いについて説明しなさい」に対しては、次の3つの間合いを答えるのが模範解答になります。「剣道における3つの間合いとは?」と初めから3つを問われるケースもあります。
- 近間
- 一足一刀
- 遠間
※一般的に相手との距離が近い順に並べています。
以下、もう少し詳しく見ていきましょう。また、他にも間合いはいくつかありますので、後半ではそれらの解説もします。
近間(ちかま)
漢字で表されているとおり近い間合いのことですが、具体的にはすぐに相手を打突できるものの、逆に相手からもすぐに打突される間合いです。別な言い方をすると、両者ともにそのまま手を伸ばすだけで打てる距離ともいえます。
実戦ではこの「近間」から技が仕掛けられる場合が多くなります。攻めの機会であると同時に、非常に危険な間合いでもあります。近間の場合、もさもさしているとすぐに打たれますので注意が必要です。
一方で、ここまで入るとお互いに打てなくなることもよくありますが、なかにはやたら近間で攻める人もいます。練度が低い人に多いように思いますが、そうした場合には、体当たりをして離すなどして距離を取るのもいいでしょう。下がるのもいいですが、注意が必要です。
間合いを詰められて困る、近すぎる相手への対処法はこちらの内容が参考になると思います。
剣道の試合で間合いをつめられる、切っても間合いが近くなる相手と戦う5つの方法
剣道の試合や練習・稽古で相手にどんどん間合いをつめられてやりにくい、または圧倒されてしまうという人もいるかと思います。熟練した高段者ならうまく対処できるかと思いますが、そう簡単にはできないこともあるものです。また、遠間から攻め入っていくと相手も前に出てきますから、間合いがつまって近くなり十分な機会でないのに打ってしまっ
一足一刀(いっそくいっとう)の間合い
一足一刀の間合いは、一歩踏み込めば打てる間合いです。人によって変わりますが、剣先が少し交わっているような状況がほとんどでしょう。もちろん、それはあくまで中段の構えの話ですから、上段の構えや二刀の場合には剣先がどうということは関係ありません。剣先が互いに少し交わる距離といのうは、分かりやすい目安の1つです。
後で詳しく説明しますが、一足一刀の間合いは剣道上達のカギを握る要素の1つです。
遠間(とおま)
遠間は一歩踏み込んでも、相手を打突できない距離の間合いです。
払ったり中心をとったりする「遠間」から「一足一刀の間合い」に入るまでの動きが試合を左右するといってもいいでしょう。相手とのかけ引きの稽古にもなりますから、初心者は遠間から練習することがいいという考えもあります。
なお、遠間からは打てませんが、遠間であっても「いつでも打てる」という気持ちを持つことはとても重要です。こうした気持ちが攻めにつながっていくからです。
剣道の昇段審査試験では問われないものの、知っておくといい間合い
通常、剣道の昇段審査では先ほどの「近間」「一足一刀の間合い」「遠間」の3つを問われるものですが、他にもいくつかの「間合い」があります。
いろんな視点で間合いを捉えることによって状況の把握がしやすくなると思いますので、他の視点からも間合いについて理解しておくといいでしょう。
剣道においては、次の間合いがあると言われています。
- 大遠間
- 触刃の間
- 交刃の間
- 中間
- 打ち間
- 当て間
これらについても詳しく見ていきます。
大遠間
大遠間はあまり使われることはないかもしれませんが、文字通りですので分かりやすいと思います。遠間よりもさらに遠い間合いです。
触刃の間
触刃(しょくじん)の間というのは刃が触れると書きますが、これは相手の剣先が交わるところまでいかずに触れ合う程度の間合いです。一足一刀の間合いよりは少し遠くなるケースが多いかと思います。
一足一刀の間合いは剣士の感覚による尺度ですが、触刃の間は竹刀の交わり度合いを尺度にしているということですね。ですから、試合をしている当事者ではなく第三者から見た間合いという言い方もできるでしょう。
交刃の間
交刃(こうじん)の間は、触刃の間よりもお互いが近くなり、剣先が交わった状態の距離です。結果として、一足一刀の間合いと同じ距離になることはあり得すが、前述のとおり一足一刀の間合いは変わりますし、上段や二刀もありますから必ずしも「交刃の間=一足一刀の間合い」とは限りません。
こちらも、一足一刀の間合いのように剣士の感覚による尺度はなく、触刃の間と同様に竹刀を基準とした間合いです。
中間
中間(ちゅうま)は、近間と遠間の間ということになりますが、触刃の間と同じ間合いとして捉えるケースもあります。
また、竹刀の届く範囲という観点からは、一足一刀の間合いが踏み込めば打突できるのと同様に、近間は踏み込まなくても届く、遠間は踏み込んでもまだ遠い、中間は踏み込めば届く間合いという意味で使われることもあります。
打ち間
打ち間は、打てる間合いと捉えてもいいと思いますが、打つと決断をくだす間合いという意味で捉えてもいいでしょう。打ち間は、人によってはもちろん、そのときの状況、その人の脚力、機会の捉え方、技の種類によっても変わります。ですから、「一足一刀の間合い=打ち間」というわけでもありません。
当て間
遠藤正明八段の書籍「剣道は寄せる・見る・打つ(体育とスポーツ出版社(2012年)」によると、打ち間は打突した後も体勢が崩れず、残心がしっかりと取れるような状態で、それに対して当て間は、単純に相手に届く距離のことを指します。
間合いの距離は変わるものであり、変えていくもの
剣道にはさまざまな間合いがあるわけですが、一足一刀の間合いなどのように人によって変わる、あるいは自分自身でも練度によって変わる間合いもあります。
特に一足一刀の間合いは剣道の上達、試合で勝つという観点から見るととても重要です。
ですが、剣道を始めた頃は一足一刀の感覚がなかなか分からないこともありますし、相手とかなり近くないと打てないということもあるものです。
相手にとっては近間くらいの間合いで、ようやく自分にとっては一足一刀の間合いということもあり得るでしょう。また、自分にとっては一足一刀の間合いだけれども、相手にとっては遠間で踏み込んでも打てないと感じていることもあります。いろんな一足一刀があるわけです。
剣道上達のうえで重要なのは間合いの距離を伸ばすこと
ただ、そうした一足一刀の間合いに違いがあることは問題ではありません。重要なのはいかにその距離を伸ばしていくかです。相手にとって遠間でも自分にとって一足一刀の間合いならたいていの場合、有利になるでしょう。ですから、掛かり稽古や打ち込み稽古によって一足一刀の距離をいかに伸ばしていけるかが剣道上達のポイントになります。
一足一刀の間合い距離は剣道上達の判断基準
一足一刀の間合いがどんどん離れていけばいくほど、それだけ試合運びが有利になりやすいと言えますから、一足一刀の間合いの距離感が自分の剣道の上達を判断できる基準の1つになります。
もちろん、あくまで剣道上達の基準の1つですから、それですべてが分かるということはありません。背が低い、リーチが短いからといって不利になるとも限らないのは分かると思います。
まとめ
剣道の昇段審査の学科試験で問われる間合いというのは「遠間」「一足一刀の間合い」「近間」の3つ。初めのうちは丸暗記でもいいので知っておくのはいいと思いますが、当然ながら丸暗記しているだけでは剣道の上達には活きてきません。自分自身の頭で考え、感覚を磨いていくことが重要になるというのは言うまでもないでしょう。
昇段審査対策だけのために間合いを知るのはどうかとは思いますが、まったくな分からないというのも問題だと思いますし、昇段審査に合格することで気持ちの面でもプラスになるでしょうから、間合いについて模範解答例をお伝えしました。
また、いろんな視点で物事を捉えるというのは間合いに限らず、他の面でも大切になりますので、是非、この考え方を応用するように心がけるといいのではないかと思います。
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