竹刀は消耗品。だからといってまったく手入れせずに使い捨てるのではなく、道具を大切に使うという意味でも手入れはしっかりしたいものです。竹刀の手入れをすることによってより長く使えるようになりますし、剣道に取り組む者の心得としても必要な要素だと思います。
他にも安全上の理由からも手入れは必須になってきます。竹刀というのは通常、構造材の多くが竹や皮革といった自然素材でできていますから、使っているうちにささくれが立ってきたり、割れてしまったりすることもあります。そうなると下手をするとケガをさせたりケガをしたりしかねません。
そうした安全性の側面からもこまめにメンテナンスを行う必要がありますが、ては、竹刀の手入れとして具体的にどんなことを行えばいいのでしょうか? 動画を交えてやり方をご紹介します。
竹刀を手入れする前提として「乾燥が敵」ということを知る
手入れについて知る前に竹刀の特性を知っておきましょう。乾燥させた竹を刀身としている竹刀ですが、実は竹という素材は水分を失うことによって強度が下がってしまいます。そこで昔から、竹を保湿して柔軟性を維持するために「油」が使われてきました。
椿油や菜種油などの植物性オイルで竹を軽く拭くようにして、油分を浸潤させます。あまりつけすぎるとベタベタして、稽古相手の剣道具を汚してしまうので、少量を布などに沁みこませて竹刀の表裏を磨くような感覚で行うとよいでしょう。
竹刀専用の手入れ油が市販されていますが、オリーブ油やサラダ油などでも代用することができます。なかにはスプレー式の竹刀手入れ材もあるので、さっと全体に吹きかけて布などでよくなじませるのも手軽な方法です。
普段から行なう竹刀の手入れ、メンテナンス
竹刀の手入れは基本的には自分の竹刀を普段からチェックし、ささくれができていないか、割れていないかなどを見て対処していくくらいです。
割れてしまった場合には手入れしても直りませんし、危険でもありますので交換するタイミングと考えていいでしょう。ささくれの場合は手入れをすれば使えますし、ささくれがたったままでは危険ですので、見つけ次第手入れをしましょう。
竹刀が修理できるかどうかの判断基準
どのくらいの損傷なら手入れして直せるのでしょうか? 後述する京都武道具店さんの動画によると、目安として以下のような状態が提示されています。
以下の2つの画像くらいのレベルになってしまうと、内部まで割れていて場合によっては空洞化していることもあるようで、修理はまずできないと思ってください。安全のためにも絶対に無理に修理して使ってはいけません。
後述の京都武道具さんの動画より
後述の京都武道具さんの動画より
一方、このくらいのササクレができている程度であれば、削ることで修理してまた使えます。
後述の京都武道具さんの動画より
そうしたササクレができたときの対処法は以下のとおりです。
竹刀のささくれを手入れする手順(2パターン)
竹刀のささくれを削る方法は弦を解いただけで柄革や先側をつけたまま削って直す場合もあれば、バラバラにしてから削って組み直す場合もありますので、それら2つのパターンをご紹介します。
竹刀のささくれを削るメンテナンスで使う道具
竹刀をバラさない場合には、ゴム手袋(柄入れゴム)は不要です。
- 目打ち(千枚通し)、キリ、ラジオペンチなど(弦を解くのに使用)
- 竹刀削り用の小刀(専用のが使いやすい)
- ヤスリ
- 竹刀油、または植物油
- 布(油を塗るのに使用)
- 新聞紙、ビニールシート(竹クズを散乱させないため)
- ゴム手袋、または柄入れゴム(バラした場合)
竹刀をバラさず弦を解いただけでささくれを削る方法
バラバラにしなくても中結を解くだけで可能な場合もありますので、その場合には次の手順になります。
- 弦を解く
- ささくれの場所を見る
- 見つけたささくれを削り取る
- 油を塗る
- 弦を締め直す
バラさずに削る場合は、こちらの動画を見ると分かりやすいと思います。
渕江剣友会さんの動画(竹刀をバラさずに弦を解いてささくれを削る場合)
竹刀をバラしてささくれを削る方法
竹刀の柄革まではずしてバラバラにした場合、こんな手順になります。
- 竹刀をバラす
- バラしたら1本1本見ていく
- 見つけたささくれを削り取る
- 油を塗る
- 竹刀を組み直す
バラした後、ささくさを削り取る、油を塗る工程はこちらの動画が参考になります。
京都武道具さんの動画(竹刀をバラしてささくれを削る方法)
中結いの結び方の解説はこちらをどうぞ。
京都武道具さんの動画(中結いを結ぶ方法)
バラした竹刀の組み方の注意
竹刀を削ったり竹を交換したりするときには、いったん竹刀の結束をはずして分解する必要があります。組み直す際には、元どおりに革や紐を締めなくてはなりませんが、竹刀は意外と複雑な構造をしているものです。
正しい結束の方法を手順どおりに行うことと、緩みがないように結び直すことが肝要です。緩みがあると使用中に竹刀がバラバラになってしまう恐れがあり、大変危険です。組み上げた後にも各所に緩みがないか、念入りにチェックしておきましょう。
また、この機会に普段は隠れて見えないような各部の裏側をよく観察しておくことも重要です。表側からは分からなくても、竹刀の裏に亀裂が走っていたり、弦の見えない部分に傷があったりするかもしれません。
これらの注意が、安全な稽古を実現することをよく心がけましょう。
上記の動画と同じですが、組み立てる部分から始まります
竹刀のささくれの削り方の注意と使う道具の違い
冒頭でも書きましたととおり、剣道での激しい打ち合いを続けると、竹刀の繊維がはがれてきて「ささくれ」が立ってきます。
これを放置すると割れが進行したり、剥離した竹片が人の目に入ったりしてとても危険ですので、発見したら即座に削り取ることで手入れを行います。ささくれを削り取る専用の削り器が市販されているので、必ず自分用のものを備えておきましょう。
道具は後述のとおり複数ありますので、違いを知っておくと何を用意しておくかも判断がつきやすいと思います。
注意点
動画でもあったと思いますが、ささくれの削り方でもっとも大事なのは、竹の繊維の「元から末に」向かって削ることです。竹刀の柄側から剣先に向かっての方向にあたり、これを反対にすると繊維に逆行するため、決してしてはいけません。
ささくれがなくなって表面が滑らかになるまでを目安にしますが、そこばかり削りすぎて隙間があいてしまってはよくありません。全体のバランスを考えながら削ることが大切です。
竹刀削りの道具の種類と違い
竹刀を削るための道具はいくつか専用のものが用意されています。大きく刃物で削っていくタイプとヤスリで削っていくタイプの2種類があります。
専用のものでなくても、小刀などであれば代用は可能ですが、専用のもののほうが使いやすくはあります。
刃物タイプ
刃物タイプは刃の部分が特殊な形をしており、竹刀のメンテナンスに特化したものになっています。有名なのが竹刀削り匠という道具。ただ、匠Aと匠Bというのがあって何が違うか分からない人もいるようです。違いは切れ味です。匠Aのほうが刃物としての切れ味があり、匠Bは角で削るようなイメージです。
こちらが竹刀削り匠A。
こちらが竹刀削り匠B。
他にも栓抜きのような形をしたもケズールというのもあっていろいろとあり、こちらは金属ヤスリもついています。こだわりがなければなんでもいいと思いますが、やりやすさを求めるなら竹刀削り匠Aがいいでしょう(2000円前後でほかよりも多少、値が張ります)。
ヤスリタイプ
刃物ではなくヤスリのタイプもあり、紙ヤスリと金属ヤスリの2種類があります。一般的には金属ヤスリは大きく削る用途で使われ、紙ヤスリは研磨に使いますが、職人が使うようなものづくりの用途ではないですので、そこまで大きく気にすることはないと思います。
紙ヤスリタイプは竹磨くん(ちくまくん)というのがよく売られています。紙ヤスリだとすぐに使えなくなりそうですが、こちらは使ってみると意外と長持ちします。人によっては1年くらい持つという人もいますし、もう少し使う人もいるようです。
金属ヤスリタイプだと、こちらの剣磨(けんま)というのがあります。
まとめ
竹刀は剣道家にとってまさしく「魂」といえる大切な道具です。
決してまたいだりしてはならず、真剣だと思って扱うようにと指導を受けているのではないでしょうか。
かつての武士が自身の刀剣を丁寧に扱ったとされているように、竹刀も細心の注意を払ってメンテナンスすることが必要です。
それはひとえに安全に稽古をするためであり、相手への思いやりと道具への感謝の心を忘れない気持ちを常に持ち続けましょう。
トップ画像に違和感を感じましたか?
ところで、トップ画像に違和感を感じることはできましたか? じっくり見ていなかった、あるいは画像が少し荒いので、分かりにくいかもしれませんが、実は竹刀の握り方が正しくありません。
そうなの? なんて方はこちらを見て正しい握り方にしましょう。意外とできているようでできていなかったりします。
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