真っ直ぐな軌道で一本となる「面」「小手」「突き」に対して、斜めの太刀筋が要求される「胴」は、特に初心の方にとってはとても打ちにくい部位だといわれています。
しかし、胴打ちは返し技などでカウンターを狙いやすく、相手の防御を崩すこともできるため、身に付ければ強力な武器となります。
ここでは、剣道初心者が胴打ちを習得するための練習のポイントについてお知らせします。
まずは「刃筋」を通すこと
胴打ちが難しいといわれるのは、斜めの軌道で竹刀を振らなくてはならないということが大きく起因しています。
さらに、剣道の有効打突の条件である「刃筋」が壁となります。
真剣であれば刃の切断面に当たる、竹刀の一番下の部位(弦の反対側)で胴をとらえるのは習熟しないとなかなか困難な動作です。
胴打ちの練習は木刀を使うのがお勧め
そこでおすすめなのは、木刀を用いてその場で胴打ちの練習を行うことです。
木刀であれば刃筋を体感しやすく、どのような角度で打てば刃筋が通るかということを手の内に覚えさせる効果があります。
タイヤなどのソフト素材の打ち込み台があれば申し分ありませんが、なければ素振りだけでもかまいません。
さまざまに角度を変えて、どのような体勢でも正しく胴を打てるように練習しましょう。
木刀から竹刀に持ち替える際に意識すること
ひとしきり木刀を振ったら、その感覚を忘れないうちにすぐさま竹刀に持ち替えて同じことを行います。
この時は、ぜひ実際に胴を打ちたいところです。
打ち込み台を使ったり、相手に立ってもらったりして感覚を身体に覚えこませましょう。
間合いによって打ち方が変わる
その場打ちで上手く胴を打てるようになったら、次は「抜き胴」など移動を伴う技を練習しましょう。
実際の試合ではその場打ちで決まる胴はとても少なく、動いている相手に対して技を決めなくてはなりません。
したがって、それぞれのシチュエーションによって間合いが異なれば、胴の打ち方そのものも変わってきます。
相手が居着けば、思い切って飛び込むような感覚で間合いを詰めたり、思いのほか相手の打ち込みが早く鋭ければ、手前に腕を折りたたむようにしてコンパクトに胴を打つ、などの工夫が必要となります。
まずは抜き胴から始めて、徐々に相手に打ち込んできてもらったり、間合いを変えたりと、さまざまな状況を想定して柔軟に対応できるようにしておくことが大切です。
胴打ちのバリエーションを網羅する
胴打ちには相手の右側の胴を打つ「右胴」と、左側の胴を打つ「逆胴」とがあります。
現代剣道での攻防のパターンとしては右胴打ちが圧倒的に多く、普段の練習でも最もなじみのある打ち方だという人もおられるでしょう。
しかし、胴打ちには逆胴を含め、実にたくさんのバリエーションが存在しています。
打てるチャンスを逃さずに、打つべき機会に迷わず打ち込んでいくためにはこれらのバリエーションを網羅するつもりで練習しておくことが肝要です。
この胴を練習しておくと頼もしい武器になる
人間の動作は、慣れないことは咄嗟にはできないようになっているともいいます。
したがって、普段はあまりしないような胴技も積極的に練習しておくと、いざというときの頼もしい武器になってくれます。
「抜き胴」「返し胴」「飛び込み胴」「引き胴」「逆胴」「折り敷き胴」等々、なるべく体格が異なる色々な人と組んで練習することが上達の秘訣です。
体さばき・足さばきも十分に練習を
胴打ちでは、斜めの太刀筋と同様に足さばきも斜め方向に向かなくてはならない場合がほとんどです。
剣道では送り足による前後への素早い動きが特徴的ですが、抜き胴や返し胴では斜め方向への歩み足など、一味違った足さばき・体さばきが要求されます。
とはいえ、それらはすべて基本動作として習うものですので、しっかりと練習しておくことが必要です。
せっかくきちんと胴を打てても、その後の足さばきや体さばきが甘いと相手の反撃を受けたり、一本を取り消されたりする可能性もあります。
正確で迅速な動作を心がけましょう。
まとめ
胴はその打ちにくさから、面や小手に比べると一本となる割合が少ない部位であるといえます。
しかし、それだけに胴打ちを得意技とすれば相手にとって脅威となり、警戒してうかつに打ち込んでこられることがなくなるでしょう。
面を打てば必ず胴に隙ができる、というのは剣道のセオリーであるため、胴打ちを身に付けておくことはとても重要なことです。
初心者の方は特に入念に、確実な胴打ちをできるように練習しておきましょう。
コメント