剣道は一対一での勝負が大原則ですが、チームを組んで試合を行う「団体戦」があります。
5人一組で行われることが多く、うち3人が勝てばチームとしては勝利となるため、個人戦では味わえないチームワークが醍醐味となります。
5人制団体戦では順に「先鋒」「次鋒」「中堅」「副将」「大将」というポジションがあり、どの選手をどこに配置するかというのも重要な戦略となります。
ここでは、団体戦で勝つための順番の決め方のポイントについてお伝えします。
団体戦で勝つにはポジションの役割と現状把握から
それぞれのポジションには果たすべき役割があり、したがって選手のタイプごとに適材適所を十分に考慮して配置することが勝利の鍵となります。
以下に、各ポジションにはどのようなタイプが適しているかを解説します。
先鋒の役割と適したタイプとは
先鋒は文字通り、トップバッターとして試合を行ういわば切り込み隊長の役割です。
お互いのチームともやはり、勝ちにいってポイントを先取しておきたいところです。先鋒には、さらに重要な役目があり、それはチーム全体にとっての試合の「流れ」を作ることです。
勝てばもちろんですが、たとえ負けたとしても次のチームメイトがさらに奮いたつような、皆の気持ちを盛り上げていくムードメーカーであることが理想です。
したがって、試合で勝てる強い選手、元気がよくガッツのある剣風の選手が先鋒に適しているといえるでしょう。
次鋒の役割と適したタイプとは
二番手である次鋒は、先鋒が勝てば続けざまに勝利をもたらして早期に決着を、もし先鋒が負けた場合は必ず挽回して次につなげるという重責を担っています。
つまりはチームの中で最も勝利が要求されるポジションであるため、ポイントゲッターとしての実力者が配置されることが多くなります。
したがって、じっくり攻めて相手を制していくというよりは、攻撃型の短期決戦を得意とするタイプの選手が次鋒に適しています。
中堅の役割と適したタイプとは
三番手の中堅は「前半の大将、後半の先鋒」とも表現されるように、試合の勝敗を決定するステージに位置しています。
3人目であるため、ここで勝負が決することもあるというチームの要です。
前の二人がもし負けても、必ず挽回して副将につなげること、そしてもし前の二人が勝っていればここで勝負を決めてチームの勝利を決定すること、そのような不退転の意思が必要とされます。
状況をよく考えて、手堅く勝ちにいくことのできる安定した剣風の選手が適しています。
副将の役割と適したタイプとは
四番手の副将は、場合によってはすでにチームの敗退が決定した状態で戦わなくてはならないこともあるポジションです。
あるいは、中堅までのメンバーのうち二人が負けていたら、チームの存続が自身の勝利にかかってくるという重圧にさらされることになります。
したがって、副将は相手の特性をよく見極めて、確実に勝ちを得るための試合運びができる戦略的なタイプが適しています。
次で最後の大将の出番となるため、副将の戦いぶり次第で気持ちの上でも大きな影響があることをよく理解できる選手を配置するのが得策です。
大将の役割と適したタイプとは
チームの最後に試合をする大将は、文字通りの牙城として堂々とした戦いが求められます。
チームの勝ちが決定している場合、または負けが決定している場合、そして自身の結果にかかっている場合、これらのうちどの状況であっても、「大将」らしい恥じることのない試合を見せてチーム全体の品格を保つことまでを考慮しなくてはなりません。
したがって、大将は試合での強さはもちろんですが、風格ある大きな剣風をもった選手が適しているといえます。
剣道の団体戦で勝つための具体的なポジション決めの方法
先鋒、次鋒、中堅、副将、大将のそれぞれの役割は上記のとおりですが、では具体的にどうやって選手を配置したらいいかについてもう少し掘り下げます。
団体戦では一人ひとりのメンバーを見たらこっちのチームのほうが弱いだろうという場合でも、勝てることがあります。もちろん、その反対もありますので自分たちが強いからといって油断すると勝てる試合を落としてしまうことがあります。ですから、どう戦うか? ということがとても大切になってくるというのは言うまでもありませんね。
では、実際にどうやって配置していけばいいのか? 上たいていのチームが最も強い選手を先鋒にするか大将にします。あるいは、勝敗が決定する可能性のある中堅ということもあります。
ですが、唯一絶対のやり方はありませんのでなかなか迷うとは思います。
そこでお伝えしたいのが普遍的な要素としてあるのは剣道の試合というのは相手あってこそということです。ですから、戦う相手に合わせてどうするか? ということを基本に考えるのがいいでしょう。具体的にはポジション決めの判断に重要となる要素は次の3点がポイントになります。
- 相手チームとの強さの差
- 相手チームにどんな選手がいるのか?
- 自分たちのチームにどんな選手がいるかを「正しく」知る
相手チームとの強さの差によってこう考える
強さの差というのは程度の差はあれ、相手より強いか弱いか同等かの3パターンしかありませんので、それに沿って考えます。
自分たちのチームが相手チームより弱い
自分たちが弱い場合には守りに入っていても勝てませんから、どんどん攻めるというのは手です。相手を翻弄できれば勝ちも見えてきます。
一か八かの賭けのような攻撃をして相手を翻弄させるようなこともポイントの1つになるでしょうね。ですから、負けない剣道をする選手よりも、不安定でも勝ちに行ける選手を起用する、あるいは、そうした戦い方に変えていくというのも有効でしょう。
自分たちのチームが相手チームと同等レベル
同等という場合には、勝ち負けが予想しにくく引き分けになることも多くなる可能性が高いですから、大将に強い選手を持ってくるのがいいといえるでしょう。
ただ、試合の勝ち負けがかかってくるとそれだけプレッシャーも大きくなりますから、メンタルを重視するのもポイントですね。大将候補選手の実力差があまりないならメンタルのブレが少ない選手のほうが実力を発揮しやすく勝ちを取りにいける可能性は高まるでしょう。
また、相手チームとの実力が拮抗している場合、負けたら取り戻すのがきつくなるともいえます。そうなると、引き分け以上を目指すというのもポイントの1つになりますから、負けない選手を起用するのが得策といえます。普段そこまで勝つわけではないが、負けることはほとんどなく引き分け以上が多いという選手ならマイナスポイントにはなりにくくなります。
自分たちのチームが相手チームより強い
自分たちのほうが相手チームより強い場合には、序盤でどんどん取ってしまうようなポジション決めの方法は有効でしょう。相手に付け入る隙を与えずに攻めきるわけです。
また、焦らず冒険もしないという落ち着いた姿勢も勝ちを盤石にする要素といえます。これはもちろん、積極性を欠く試合でもいいというわけではありません。勝てる相手に対して、一か八かの賭けのような動きをする必要はないということです。
相手チームとの差が分からない場合
場合によっては相手チームのことが分からない、ということもあるでしょう。
まったく分からないような場合には考えても無駄です。迷っても何の意味もありませんから、セオリー通りに決めてしまうというのが手っ取り早くていいでしょう。
ただ、事前になんの情報もないということはないと思いますので、もしそうした状況にいるなら単に情報不足、準備不足といえるケースかと思います。もしそうならば、試合前の準備としてきっちりと相手チームを知るということをやっておきたいものです。
相手チームにどんな選手がいるか?
団体戦で勝つには、相手チームが強いか弱いかということと同時に、個々の選手はどうなのか? という点も知る必要があるでしょう。
これまでの団体戦でのポジション決めの記録や戦績といった相手チーム全体の情報はもちろん、個人の選手がどう戦うか? 守りが強いのか? 攻めがすごいのか? 攻めるなら面が得意なのか? 小手が得意なのか? 弱点は? などできるだけ相手を知ることが大切になるのは言うまでもありません。
個人戦と団体戦で戦い方が違うこともありますので、そのあたりも注意が必要ですね。
相手チームの選手に合わせて自分たちの選手をどう戦わせるか? ということになりますから、次に自分たちのチームの選手を正しく把握するということがポイントになります。
自分たちのチームにどんな選手がいるかを「正しく」知る
団体戦で勝つには、相手チームとの実力差や選手を知ると同時に自分たちのチームの選手がどうか? ということも知っおく必要があります。
といっても、自分たちのチームの選手の特徴はよく分かっているとは思います。ですから、今さら言うまでもないことと思うかもしれませんが、注意点が1つあります。
それが、戦績などデータとして取れることはしっかりとデータをもとに判断する必要があるということです。印象と事実は違っていることがありますので、データできっちりと傾向を把握しておきましょう。できるだけ客観的に正しく知るということです。
もちろん、「正しく」知るということは相手チームの選手に関しても同じです。ですが、ついいつも接している選手のことは知っているつもりになってしまうことがありますので、あえて「正しく」という表記にしました。
まとめ
5人制団体戦での各ポジションの概要は以上のとおりですが、これはあくまでも一般論です。
そうした一般論を踏まえつつ、あらかじめ対戦するチームについての知識をそろえておき、相手方の布陣を予測してその選手たちと相性のよい自軍の選手をぶつけるなど、あえてポジションに関するセオリーをはずすという戦略もあるというお話です。
勝ちたいのであれば、一般論を逆手にとったり、あるいは相手に合わせて組んだりして、戦いの前の段階で戦略を練ることも必要でしょう。
ただ、あまりにも勝ちにこだわりすぎて剣道精神を忘れてしまうのは考えものです。勝敗がついていたり、勝負どころでも基本はそのままにしたうえで、考える剣道をしていきたいものです。
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