剣道において竹刀を正しく握るというのは、竹刀を自在に操るためにもとても重要な要素。
剣道における竹刀の握り方やスナップの利かせ方等、攻防の動作を行う竹刀操作のための手の使い方を「手の内」と総称していますが、竹刀の握り方はその手の内に深く関係してきますから確実にマスターしておきたいところです。
「手の内は人に語るな」という格言があるほど、修得が困難で生涯の研究テーマであるともいえるのが手の内です。
といっても、初めから難しく考える必要はありませんが、意外と間違っていたり、剣道の高段者でも正しくできていなこともあるほどです。まずは基本をきっちりと身につけましょう。
以下、竹刀の握り方の基本です。
まずは竹刀の握り方の基本を確認
正しい竹刀の握り方というのは、剣道を習い始めるともっとも早い段階で教わる基本的な技術となります。
しかし、剣道の動作に慣れていくにしたがって段々と独自の「くせ」が出てきてしまい、基本とはかけ離れた握り方をしてしまうようになることがあります。
これは意識せずに行うと誰しもがそうなる可能性があるということでもあります。だからこそ普段の稽古で竹刀を握るたびに、よくよく基本を確認する必要があります。
以下に、竹刀の握り方の基本についての概要を示しますので、何度でも確認して無意識に正しい握りができるように稽古しましょう。
竹刀を握る手、指の位置
Vの字ができるような形で握ります。左手も右手も上から見て人差し指と親指でV字ができるような形で握ります。左手の位置は柄頭いっぱいまでの位置で「小指半がけ」と言われる位置です。読んで字のごとく小指が半分かかるようなイメージですね。
決して柄頭が見えるような持ち方はやってはいけません。左手がずれてしまいがちだからです。例えば、突きをした場合などに左手がずれてしまいやすくなり不安定になります。
右手は、鍔に人差し指がつくようにしますが、Vの字をつくりますから右手がベタッと鍔につくような持ち方はNGです。後述する「横握り」のような状態になってしまうと、そうなりがちですので注意しましょう。
竹刀の握りは左手優位、小指に力をいれる
竹刀の握り方でよく注意されるのが、それぞれの指にどのように力を入れるべきか、ということです。
基本は、先ほどもお伝えしたとおり、左手で竹刀の柄頭いっぱいまでを握り、小指にもっとも力が入るようにします。
その後、薬指→中指、と段階的に力を緩め、人差し指と親指は軽く柄を挟む程度の心持ちにします。
そうすると手の形は、甲側を上から見ると「グー」ではなく菱型に近いかたちとなります。
そして右手は軽く竹刀に添えて、左手の力が優位となるように心がけます。
竹刀を握るときの力加減
一般には左手7に対して右手3くらいの力加減を意識するとよいとされていますが、これは利き手と逆手の筋力差を均等にして、バランスをとるための工夫です。
どちらか一方の手の力が勝ると、まっすぐな軌道で打つことができず、試合でチャンスがあっても的を外してしまうことがあります。
狙った箇所を正確に打てるようになるためにも、左右のバランスを意識しましょう。
左手に関しては、傘を握るようなイメージと言われることもあります。「風が吹いても傘がピシッと止まるような感じ」という説明をされる八段の方もいらっしゃいます(筑波大の香田郡秀先生など)。
右手に関しては軽く添えるように、とお伝えしましたが、握る際には左手と同様に小指から薬指、中指、人差し指、親指という順番に握ります。
イメージとしては、右手は小鳥を握るような感覚で、という八段の方もいらっしゃいます(こちらも筑波大の香田郡秀先生など)。握りがあまりにも弱いと逃げていってしまいますが、強いと苦しめてしまいます。
右手主導になりがちな人は、再度こうした基本に立ち返るのもいいかもしれませんね。
手首は柔らかく、柄の中心を上から握ると効率よく竹刀を振れる
竹刀を握る際には、いかに効率よく振ることができるかということに着目しましょう。
ただ単に竹刀を持つだけではなく、素早く自在に操るための握り方と力の入れ方を探るべきです。
前項では指の形や力の入れ具合について説明しましたが、注意すべきは「力み」が出ないようにすることです。
剣道特有の高速の打突は、瞬間的に速さと強さを竹刀に伝える「手の内」の技術に支えられています。普段は手首を柔らかく保って、必要なときに必要なだけの力を加えられるようにしておくことがポイントです。
竹刀の握り方で重要なもう1つのポイント
加えて重要なのが、竹刀の柄の中心を意識してしっかり上から握る、ということです。
具体的には、竹刀を握ったときに親指と人さし指の間がV字になるその中心に、竹刀の柄革の縫い目がまっすぐ通ることを目安にします。
これによってスナップを最大限竹刀に伝えることができ、速く強い打突を生み出すことができます。このとき、くれぐれも「横握り」にならないよう注意しましょう。
これが横握りの例です。
竹刀の握りひとつで動作が鈍くなるので注意
また、竹刀を持つ手に力が入りすぎると、身体全体がこわばってしまいます。そうなると、動きにくくなり居ついてしまうこともあります。
試合では一瞬の遅れで不覚を取ることになるので、握りを柔軟に保って戦況の変化に即座に対応できるように心がけましょう。
自分にとってのベストフォームを探る
これらの基本は、初心者から高段者まで変わることのない原則的な動作です。
まずは、教えてもらった通りのことができるようになるまで繰り返し身体に覚えこませましょう。
しかし、実際にはどの程度の角度で竹刀を握るのか、左右の力の配分は正確に7:3でなければいけないのか、等々の細かい点は厳密に決まっているわけではありません。
なぜなら、一人ひとり手の形や体格、適切な構え方などが異なっており、ひとつとして同じ握り方は存在しないからです。
「手の内は人に語るな」という格言の真意は、秘伝を安易にひけらかさないということ以上に、各人の個性を無視して画一的に指導することを戒めているとも考えられます。
まずは基本を身に付け、それからじっくりと自分独自のベストフォームを研究していくことが肝要です。
まとめ
剣道を始めて最初に突き当たる壁のひとつに「打ちがうまくできない」という問題があります。
原因はさまざまですが、根本的な竹刀の握り方を考えると劇的に打突が上達する事例は多くみられます。
正しい方法で、しかも自分に合ったベストな握り方を見つけることは簡単ではありません。
しかし、そんな考究も含めて剣道の修行となりますので、いくつもの方法を試しながら修得していくのも大切なプロセスです。
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