剣道ではこちらから能動的に攻撃をしかけるものを「仕掛け技」、そして相手の攻撃をかわしたり返したりしてカウンターをとる技を「応じ技」と分類しています。
ここでは、応じ技のひとつである抜き技に関してお伝えします。抜き技は面抜き小手が代表的ですが、他にもバリエーションはありますし、抜くタイミングが分からない、コツやポイントを知りたいという方もいますので、今回は応じ技に相当する抜き技をどうやってうまく決めるのか? ということについてお伝えします。
抜き技は二系統ある
抜き技というのは相手の打突をかわして空を切らせる、つまりは「抜く」ことによって隙をつくりだし、すかさず打突を加える技ですね。
抜き技には体さばきで相手の打突をかわして行うものと、竹刀を振り上げてその打ちを空振りさせるものとの二系統があります。
実際にはそれら二つの動作を組み合わせて行うことが多いのですが、試合などでも効果的な実践性にすぐれた技が多くあります。
そんな抜き技について、代表的な例として次の4つを挙げてお伝えします。
- 面抜き面
- 小手抜き面
- 面抜き胴
- 突き抜き胴
面抜き面
相手の面打ちを竹刀を振りかぶりながら下がってかわし、即座に間合いを詰めてそのまま面へと振り下ろして決める大技です。
この技は日本剣道形一本目に相上段での例が示されています。
現代剣道では実現が難しい技の1つと言われます。
ですが、「見切り」と「前後へのさばき」が融合した高度な技術として、目指すべき境地のひとつと考える人もいるようです。
実際の試合で使用する際には、相手の面打ちを抜いた瞬間に、そのまま「引き面」に変化して素早く後方に下がって間合いを確保して一本に決める、というバリエーションもあります。
また、日本剣道形一本目では下がることで抜いて面抜き面を打っていますが、これは実戦では使えません。
そこで、相手が面にきたら右斜め前に出ながら、体を相手に向けるようにして抜くという方法があります。
いずれにせよ、的確な間合いの判断が重要となる高等技法であるといえるでしょう。
面抜き面の動画
こちらの動画の2本め(2:30付近)に白の選手が抜き面で一本取っています。
面抜き面? 小手抜き面?
面を抜いているように見えますが、軌道を考えると小手を抜いているようにも見えます。いずにれしても、見事に抜けていますね。
小手抜き面は最も試合で決めやすい抜き技
抜き技の代表例として、実際の試合でも比較的決まりやすいのが「小手抜き面」です。
読んで字のごとく、相手が小手を打ってきたところを竹刀を振り上げてその打ちをかわし、そのまま竹刀を振り下ろして面に打ち込むという技です。
抜こうとしたときに手首だけを上げると小手を撃たれる可能性がありますので、相手が小手にきたら自分の左の拳を上げて額に持ってきて、あとは基本どおりに打てば小手抜き面が決まります。
竹刀を振り上げることで腕を上方に移動させ、相手の打ちを空振りさせることがこの技の要点です。
相手が本当に「打った」と思うほどぎりぎりまで引き付けることができれば、空振りした瞬間に咄嗟に竹刀の軌道を元に戻そうとして「居着き」が生じます。
その一瞬の隙に面が無防備となるため、振り上げてすでに攻撃態勢にある竹刀を真っ直ぐ振り下ろせば面を打てる、という理屈です。
コツとしては竹刀を振りかぶるときに決して手前に引かず、むしろ前に突き出すくらいの気持ちで抜くことです。
ついつい相手の打ち込みのプレッシャーに押されて手元に引きがちになりますが、思い切って前方へと大きく出しながら振りかぶることでうまく相手の打ちをかわすことができます。
面抜き胴
相手が面を打ち込んでくるところを、自身の右斜め前に体さばきを行いながら右胴を打つという技です。
相手の竹刀を受けたり払ったりせずに、完全に「抜く」動作であることから「面抜き胴」と呼ばれます。
これも十分に相手を引き付けて、ぎりぎりの位置で面打ちをかわすことが重要であり、「見切り」の技術が必要となる技です。
面抜き胴の動画
動画で見てみるとこうした形になります。
面抜き胴、稽古用の動画
面抜き胴のスロー動画
突き抜き面
相手が突いてくるところを左右どちらかに体さばきを行って空振りさせ、相手が竹刀を手元に引き戻す前に面に打ち込むという技です。
上段に構える選手が中段から突きを放ってくる相手に対して使うことがよく知られていますが、相中段でも同じことができます。
可能な限り、首をひねってかわすのではなく足さばきで最低限の距離を移動することで相手の突きを引き付け、隙をつくりだすよう仕向けるのがポイントです。
まとめ
抜き技は抜いた瞬間に竹刀を振り上げていたり、攻撃態勢が整っていたりするのが原則であるため、間髪入れずに打ち込むことが肝要です。
完全に抜きが決まれば、相手は空振りの勢いを戻そうとして瞬間的に「居着き」の状態となるため、こちらの打ち込みが決まりやすくなります。
ただし、十分に相手を引き付けて「見切る」ための眼と胆力が必要なため、普段から十分に稽古しておくことが必要です。
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