剣道の根幹を支えるといっても過言ではない、重要な動作である「足さばき」。
より速くより正確に、そしてより自由自在に動けるようになることは、すべての剣士にとって大きなテーマであるといえるでしょう。
そんな足さばきを身につけるため、数々の稽古法やトレーニングが工夫・開発されてきました。
今回はそんな足さばき上達のための練習メニューの例をいくつかみてみましょう。
足さばきは反復練習が要
まず念頭に入れておきたいのは、足さばきは繰り返し行う「反復練習」によってしか身につかないものであるという点です。
どんなに運動理論を頭で理解できても、物理的に身体がその動作を実現できてこそのものであり、一定以上のトレーニングが要求されるためです。
以下に、そのためのトレーニング法をご紹介します。
足さばきの練習で有効なルーティン
多くの道場やクラブで基本的な稽古として導入されている、オーソドックスな練習メニューをご紹介します。
トレーニングとして活用するためには準備運動として行うのではなく十分な時間を割いてひとつのルーティンとして組み込むことがポイントです。
ただし、流れに乗って惰性でやってしまっては意味が薄くなります。ひとつひとつの動作を正確に行うことを心がけましょう。
前・後・右・左・左右の斜め前後等々、「体育館の短軸を端から端まで○往復」などと決めて、毎回の稽古に必ず組み込むとよいでしょう。
号令に従っての速い足さばき練習
正確に動作を確認しながら行う足さばきの練習に加えて、次は実戦でのスピードを鍛えるための足さばきを行います。
たとえば、通常のスピードで連続して送り足で前進している途中で、笛や拍子木で合図をします。
その瞬間に全速力の送り足に切り替え、再び合図があればもとのスピードに戻します。
号令者はランダムに、しかも断続的にこのような合図を送り、瞬発的な反応ができるように鍛えます。
もちろんあらゆる方向への足さばきで同様のことを行い、どんな状態でも即座にトップスピードへと移行できることを目指します。
壁に手をついての腿上げ(ももあげ)
足さばきのなかでも打突の速さと鋭さを担うのが「踏み込み足」です。
この出足を速くすることで相対的な攻撃スピードをアップさせることが可能となります。
トレーニングの一例としては壁に手をついて前傾し、踏み込みで足を前に出すような要領で「腿上げ」を行います。
片側ずつ素早く連続して、あるいは左右交互に素早く等々、変化をつけつつも身体の左右を上手に使う感覚を鍛えます。
急激に行うと筋肉を傷めることもあるため、事前に入念なストレッチなどのウォーミングアップも必要です。
二人向き合って元立ちに合わせての足さばき
これは相手が小手を打ってきたところを受け返し、面への防御反応を示して手元を上げた瞬間に胴へと転じる技です。
小手返し面という応じ技は予測しやすいため、反射的に面をかばう相手には意表をついた太刀筋と感じられるでしょう。
相手も小手の単発ではなく、即座に面へとつなげるパターンが多いため、自身の小手面を防御しつつ胴を狙える効果的な技です。
剣道の足さばきの練習になるラダートレーニング(動画あり)
フットワークを必要とするあらゆるスポーツで導入されているのがラダートレーニングです。
文字通りはしご(またははしご状のもの)をまたいで移動することで、強制的に足を細かく正確に動かすというトレーニング法です。
剣道の稽古においても有効なことが知られ、縄はしごのようなものや、体育館の床にテープではしご状の模様をつくって行うこともあります。
ラダートレーニングが剣道に与える効果としては、左右・斜めへの「ステップ力」の向上です。
前後の動きが多い剣道ですが、横方向への動作が機敏になると技の範囲が格段に広がります。
はしごの各グリッドに沿って、連続で横や斜めへの足さばきを行ったり、クロスステップでセオリー外の足の動きを鍛えるなど、さまざまな工夫ができます。
立体的なはしご状の器具を使う場合は、足をひっかけて転倒しないよう、十分注意が必要です。
ラダートレーニングの例
まとめ
フットワークの向上はあらゆる運動競技における課題ですが、素足で行うという剣道の特殊性から、トレーニングの際には体育館の床などのコンディションに万全の注意を払いましょう。
また、初心のうちは足の裏がやわらかく、剣道の激しい足さばきに対応しきれません。
稽古を重ねるうちにやがて厚く堅い「剣道の足」になっていきますが、ウォーミングアップの段階で少しずつ床との摩擦に慣らすような工夫も必要です。
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